JAPAN JAM 2011

去年から始まったJAMがテーマの新しいロキノンフェス。2回目にして早くもJAMの枠を超えたとんでもない組み合わせが登場したり、逆にこれぞJAMという見応えあるステージもあって最高に楽しかった。出演者発表の前に3日通し券買ったんだけど正解だったな。

1日目

2011年5月3日(火・祝) 幕張メッセ 9〜11ホール

まだ2回目のJAPAN JAM。当然試行錯誤の最中なわけで、去年からいくつかの点が変更された。日程は2日間から3日間に。ステージは2つから1つに。そして会場が富士スピードウェイから幕張メッセに。

駅からメッセに続く道は大勢の人で溢れていた。ずいぶん盛況だなと思ってたら、そのほとんどがメッセの1〜8ホールで開催中のフリーマーケットに向かっていくという悲しい現実を目の当たりに。去年の客入りは1万くらいだったようだけど、今年はそれよりちょっと多いくらいだったかな。会場が小さくなったからそこそこ入ってるようにも見えるけど、実際は大したことなかった。

開演時間になると、まずは他のロキノンフェス同様ツェッペリンの「The Song Remains The Same」と共に渋谷陽一氏が登場して朝礼。

今回は会場の照明をLEDにしたので電力消費は10分の1だそうで。いつもなら他にも会場の装飾に力入れましたってな話もするんだけど、今回はあきらかにCDJの時のを使い回してるので、その辺は割愛。ただステージセットは渋谷さんも言った通り円盤が6つ浮いてるような照明がインパクトあって良かったな。

Dragon Ash

1組目はDragon Ash。まずはkjひとりが登場し、ギター1本で静かに弾き語り。後半メンバーが合流してBOØWYの「Dreamin’」のカバーを披露すると、3曲目にして早くも10-FEETのTAKUMAがゲストとして登場。

続く4曲目では出し惜しみ無しなく2人目のゲストであるエレカシの宮本浩次が登場。演奏するのは以前テレビでもコラボした「ガストロンジャー」。バンドの音はエレカシよりもヘビーで、これはこれでかっこ良かったけど、どこか取ってつけた感があったかな。当たり前かもしれないけどエレカシがやる方が地盤がしっかりしてるって感じがして違う迫力がある。長年連れ添ってるバンドの結束ってのはやっぱ凄いんだなと改めて実感した。

宮本さんが去ったあとはシークレットでラッパ我リヤや山嵐の人が登場したり、Nirvanaの「Smells Like Teen Spirit」のカバーまで飛び出して初っ端から豪華な内容。Dragon Ashってそんな好きなわけでもないんだけど、このステージは素直に楽しめた。

個人的には宮本さんの呼び込みのときに演奏されたサバスの「IRON MAN」がテンションあがったな。kjが宮本さんのことを日本ロック界のアイアンマンって紹介してたのも印象的。

スガシカオ

2組目はスガシカオ。デビューしてから14年、ずっとファンクとはどういう音楽かを伝えるためにがんばってきたけど残念ながら浸透していないと嘆くシカオちゃん。会場入りしたときにバイトの男の子に「Dragon Ashのメンバーの方ですよね」と言われたという悲しいエピソードも紹介していたくらいなので、確かに浸透してないんだろう。

そこで今日は、ファンクを伝道するために日本では非常にマニアックな「ワシントンゴーゴーファンク」というジャンルの音楽をやるとのこと。今日本でやってるのはこのバンドだけじゃないかと言う「ワシントンゴーゴーファンク」は、同じBPMで途切れることなくいろんな曲をやり続けるというものらしい。本場ではこれを2時間くらいやってどんどん盛り上がってくらしんだけど「今日は2時間やるとすげー怒られるから20分にまとめてきた」ということで、ファンクタイムがスタート。

これかっこ良かったなぁ。途中からシカオちゃんに「日本のファンクの父」と紹介され、FYLYING KIDSの浜崎貴司がゲスト参加。合間にシカオの曲のメロディーや朝まで生テレビで使われてる曲なんかも入れ込みつつ、「上を向いて歩こう」、FYLYING KIDSの「幸せであるように」「炎(ファイヤー)」を披露。

「炎(ファイヤー)」では「シカオちゃんやばいよ…俺の燃料棒が…なんとかシーベルトを出してるよぉー!」と謎の叫びも飛び出し、スガシカオ自ら「時間帯が早すぎる」と言うほどの濃い世界を展開。確かに2時間やってもいいくらい気持ちよく踊れるステージだったな。

ちなみにバイトの子には、怒髪天の増子ですって言おうと思ったんだけど、それは増子さんに怒られるかなと思ったんで「スガシカオのサポートメンバーです」って言ったらしい。切ないっすなぁ……。

FACT

3組目のFACTは映像とコラボするという、今回の中では異色のコンセプト。映像と音が完全にリンクして、とか言われてもステージの上の方にスクリーンがあるだけで映像の存在感が薄く、はっきり言って普通のライブだったな。

MCでは、来年は友だち作って一緒にやりたいみたいなこと言ってたけど、一緒にやってくれる人居なかったから映像とコラボしたんだろうか……。

会場は盛り上がってたけど、個人的にFACTはパッとしないので途中から外に出て飲食エリアの椅子で休憩タイム。


今回は1つの空間の中にステージ、飲食エリア、物販など全ての施設があって、ステージは幕1枚で覆われてるだけなので、どこにいても普通に音は聞こえてくる。

ステージが1つなので演奏中は飲食エリアがスカスカで終わるとその逆と、非常に分かりやすい状態。人が少ないと楽でいいんだけど、演奏中の飲食エリアは寂しくなるくらい人がいなかったな。ステージが盛り上がるのは当たり前なんで、それより飲食エリアが賑わってる方が、このフェス人気あるなって感じがする。JAPAN JAM2年目。まだまだこれからですな。

10-FEET

4組目は去年に続いての登場となる10-FEET。まずは3人でいつものステージを展開したあと、今日は凄いゲストを呼んでるぞと演奏し始めたのはB’zの「Easy Come, Easy Go」。実はこれ、去年もやったネタ。このフェスのお馴染みネタにしようとしてるんだろうか。イントロが終わったところで「来るわけないやろー!10-FEETやぞー!」と仕切り直したところで登場したのは難波章浩。演奏する曲はHi-STANDARDということで盛り上がりが一気に加速。

メンバー全員ハイスタファンということで実に楽しそうだったな。ドラムのKOUICHIに関しては、ずっとコピバンしてたくらいのファンで、リハの時にビデオ撮ろうとしてたらしい。去年は渡瀬マキと共演してミーハーぶりを発揮していたメンバーだけど、今回はTAKUMA曰く「今日は10-FEET史上もっともミーハーな状態」だって。

「STAY GOLD」や「NEW LIFE」などハイスタの曲を数曲やって、メンバーも客もすっかりこのコーナーを堪能したあとは、2人目のゲストを紹介するぞとTAKUMAが突然ハーモニカを吹きだした。このメロディーはTHE 虎舞竜の「ロード」だ。イントロを吹ききり「ちょうど1年前に……」と歌いだしたところで「ここまでしかできませんでした」と謝って始まったのは「RIVER」。

間奏でDragon Ashのkjが、さっきの難波さんをリスペクトするかのように「STAY GOLD」を歌いながら登場すると、そのままラップで参加してコラボレーション。

更に「ミクスチャーロックは好きですか?」というkjの一言から始まったのはDragon Ashの「Fantasista」。Dragon Ashのダンサー2人も登場して盛り上がりは最高潮。後半は、楽しそうで我慢できなかったのかDragon Ashのドラマー桜井も乱入してKOUICHIとドラム交代。手の空いたKOUICHIはダンサーと一緒に踊りだし、ステージの上はまさにお祭り状態。

最高に盛り上がったあとは10-FEET 3人に戻ってTAKUMAのMC。

「テレビ見ても、ニュース見ても、インターネット見てもわからんことばっかり。いつかなんとかなるやろ。誰かがなんとかしてくれるやろうとか思ってきたことのツケが回ってきている気がします。これからは右へならえじゃなくて、自分で判断して考えていくのが大事だと思う」とメッセージを伝えてから「1sec.」「風」「goes on」と畳み掛けて終了。

さんざん馬鹿やって、最後きっちり締める。実に10-FEETらしいステージだったな。

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND

5組目はOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND。まずはOAUだけでしっとりと数曲披露したあと「見た目は弱っちいけど、中身と歌ってる歌は本物の男」とTOSHI-LOWに紹介されて、ゲストの高橋優が登場。

「素晴らしき日常」「現実という名の怪物と戦う者たち」など、高橋の楽曲をいくつかやったんだけど、これがOAUとの相性ばっちりだった。本人たちも言ってたけど、ゲストというよりOAU+高橋優というひとつのバンドとして完成されててすげー良かった。。

しかも演奏だけでなくMCの相性もバッチリ。高橋が昔BRAHMANのコピバンしてたというエピソードを紹介するとマーティンが「BRAHMANって何? あ、TOSHI-LOWのもうひとつのうるさいバンドか」と、とぼけた発言。更にはTOSHI-LOWが「でもイエモンの方が好きって言ってたよね。どっちなの?」と高橋に鋭く突っこむ。

「いや…音楽って…そういうんじゃない…じゃないですか」と動揺する高橋に「今日どっちか決めようぜ。俺と、なんだっけ、あのー、吉田ブロンソンと」とボケるTOSHI-LOW。「吉井ロビンソンでしょ」高橋がすかさず返すと「そうそれ、ま、どっちでもいいよ」って。どっちでもいいんかい。

今回、売上を震災孤児のための義援金にしようとコラボTシャツを作った彼ら。「よければ買ってください」と高橋が紹介をすると、TOSHI-LOWが「買え!って言えよ」と横から命令。「いやぁ…僕にはそれはちょっと……」と弱腰になる高橋を尻目に「ロッキンオン手数料取るんじゃねぇぞ。義援金にしろ」と凄みを利かせるTOSHI-LOW。今回の震災後、早くから立ち上がり行動を起こしていたTOSHI-LOWの重みがある言葉だったな。

そのあと自分たちのニューアルバムの紹介をしたマーティンは、こんないやらしい話でと恐縮しながらも、最後には「買え」と一言。こっちは凄みなかったけど。

世界の共通言語は英語じゃなくて笑顔だと思うと歌う「福笑い」が終わったあとには、マーティンが「いい歌だね。でも、おれは英語も大切だと思う。たとえば誰かに道であって相手が笑顔だけだったら気持ち悪いでしょ。言葉は大事」と、水を差すような発言。高橋も押されつつ「確かに言葉は大切ですよね」と賛同し、二人が握手をしたとこでTOSHI-LOWが「なにその茶番は」と突っ込み「笑顔になったらなんて言うの?」と始まったのはOAUの「Thank you」。

ほんと相性が良くて、このバンドでツアーして欲しいくらい素晴らしかった。この日のベストステージはここだな。

ちなみに、最初は渋谷陽一からこいつとやれって別の人をゲストに紹介されてたんだけど、その人が震災で寝込んで大阪にいるっていうんで、TOSHI-LOWが他の人探した結果高橋優になったんだって。最初の人って誰だったんだろ……。

怒髪天

6組目は怒髪天。「JAMって英語の意味がよくわからなくて間違えちゃった」という増子さんが選んだ今回はゲストは、まさかの山本譲二。始まる前から話題騒然だったこのステージは、ど頭からいつもと違っていた。

まず会場に流れたのはいつもの登場SEではなく、なぜか「伊勢佐木町ブルース」。ピンクの照明でスナックみたいな雰囲気になったステージに、もう1組のゲストである勝手にしやがれのホーンセクション&キーボードと共にメンバー登場すると始まったのは、越路吹雪の「ろくでなし」。

イントロにのって登場したのは、ピンクの羽が束になったマフラーみたいなやつを首から下げた、シャンソン歌手のような増子さん。そのまま「ろくでなし」をがっちりフルコーラス歌いきると、マフラーを床に叩きつけ「こっちじゃない!この『ろくでなし』じゃない!」と自らに突っ込んでから、今度は怒髪天の「ロクでナシ」がスタート。長いノリツッコミだこと。

ひとまず怒髪天のステージで盛り上がったあとは、お待ちかねのゲストタイム。「ここからはチケット料金倍です。ここから信じられないほどの年末感が君たちを襲うことになる。俺の予想が確かならば、ここで年が明ける」という増子さんの紹介を経て、ついに山本譲二登場。歌うはもちろん「みちのく一人旅」。どの店に行っても間違い無く売ってない金ピカのロングジャケットが、その存在感と年末感を尚更に引き立てる。

いくら日本でフェスが定着してきたとはいえ、まさかこんな人をフェスで見る日が来るとは思わなかったなぁ。そして「みちのく一人旅」でオーディエンスが拳を振り上げる光景を見ようとは。

曲が終わると勝手にしやがれのメンバーは退場し、入替わるように大量のコーラス隊が登場。なぜかMONOBRIGHTの桃野やヒダカまで参加しているコーラス隊をバックに怒髪天の「GREAT NUMBER」を山本譲二が熱唱。もともと演歌っぽい雰囲気のある曲だけにハマってたなぁ。かっこ良かった。

その後、山本譲二はコーラス隊と共に退場。再び勝手にしやがれのメンバーを加えて怒髪天ナンバーを数曲披露してから、最後は再び山本譲二&コーラス隊を加ええた本日のフルメンバーで「上を向いて歩こう」を演奏。山本譲二はジャケットを黒に着替えてるが、ラメラメで相変わらず輝いてる。

そして今回はコーラス隊に高橋優やTOSHI-LOW、それにその奥さんである女優のりょうまで加わってる。この二人が揃ってるとこ初めて見たから山本譲二より興奮してしまった。

山本譲二が歌詞を間違え、照れ笑いしながら増子さんにフォローされるなんて場面もあったけど、最後はみんなで合唱して大団円。震災後の日本を応援するために作られた新曲「ニッポン・ラブ・ファイターズ」がBGMで流れる中、演奏を終えたメンバーが舞台の前に整列。「今日から新しい年だ」と年明け宣言したあとに「新しくやり直すぞ!俺たちでやり直すぞ!」と増子さんらしい力強い一言が心に響いた。

「じゃあ最後はアニキに一本締めで締めていただく」とマイクを隣の山本譲二に差し出すと、これが予定外だったらしく驚きつつもマイクを受け取る山本譲二。

「怒髪天と知りあえて、今しみじみよかったなと思っています。こうして皆さんと出会えたことも感謝しています。ありがとうございました」と感謝を述べると「では、リーダーからのご指名でございますので……」と前置きしてから見事な口上を述べ、盛大な関東一本締めで終了。見事な年末感を出してステージは幕を下ろした。

ヒダカトオル

すっかり新年ムードのなか登場した本日のトリはヒダカトオル。ビークル解散後、MONOBRIGHTに加入したけど、今回はヒダカトオル個人として登場。ビークルの「HIT IN THE USA」をBGMに登場すると、そのままバンドで「HIT IN THE USA」を演奏。

更に「BE MY WIFE」と、続けてビークルの曲を披露したあとは、ゲストとしてMONOBRIGHTが登場。ヒダカさんがMONOBRIGHTの衣装に着替える間、トークでつなぐ桃野。「意外と喋ること無いよー!」と早めのネタ切れ宣言をしつつ、なんとか繋いで全員が揃うと、そのままMONOBRIGHTの曲を数曲披露。

ひとしきり踊ったところで2人目のゲストである中村一義が登場。挨拶がわりとばかりに「キャノンボール」を披露すると、そのあとは冒頭でバックを務めたヒダカBANDのメンバーがビートルズのSgt. Pepper’s のジャケットを模した衣装を着て登場。その手には他の出演者の分も用意されてる。

全員がとにかく暑いというこの衣装に着替え終わったところでビートルズカバーのコーナーに突入。「A Hard Day’s Night」「Ob-La-Di,Ob-La-Da」「Magical Mystery Tour」「Hello Good-Bye」、更にレノンの「imagine」と、誰もが知ってる曲を次々演奏。こんだけ有名どころを揃えられると、さすがに誰でも楽しめる。

MCでは、ヒダカが中村の宅録アルバム「金字塔」を聞いてバンド編成を選んだことや、中村がビークルにバックバンドを頼んだこともあるというエピソードも紹介。それは実現しなかったけど、もしかしたらビークルが100sになってたかもって。これは意外な話だったな。

「All You Need Is Love」で本編を締めると、アンコールではヒダカも桃野も中村の曲が好きだからと「永遠なるもの」を披露。桃野に至っては普通にファンということで楽屋でサイン貰ってたらしい。ちなみにメンバーであるヒダカにもサイン貰ったことがある男だ。

最後はまたしてもビートルズから「Hey Jude」。みんなでコーラスを合唱して1日目は終了した。この曲の締めくくり感は、やっぱすごいな。

〜2日目に続く