JAPAN JAM 2011

3日目

2011年5月5日(木・祝)

渋谷さんの朝礼によると、この日が最も来場者が多いとのこと。実際言われなくてもはっきり分かるくらい多かったな。とはいえ満員という感じでもなかったけど。あと出演者が出演者だけに、渋谷さんも言ったとおり年齢層が高かった。実に高かった。

奥田民生

最終日のトップバッターは、朝の11時から歌うのは始めてという奥田民生。ゲストのHiGEと共に登場すると「よろしくおねがいしまーす」と眠たそうに挨拶し「マシマロ」でスタート。

元々ツインドラムという変わった構成のHiGE。2曲目ではそのうちの1つに民生が座ってドラムを担当し、HiGEの曲を演奏。続く3曲目に至ってはもうひとつのドラムセットにアイゴンが座って、民生+アイゴンというツインドラムの前で本来のドラム2人がボーカルを取るという何だかよく分からない構成に。なんだこの学園祭感は。

ドラムで2曲終えセンターに戻ってくると「朝からキツイのは歌じゃなくてドラムだった……足つった…」と、しきりに足を延ばす民生。MCでは「大丈夫ですよね? オープニングにふさわしい感じですよね? 盛り上がりすぎもせず。これからどんどん上がってくって感じで」と相変わらずの力の抜けっぷり。

ちなみに今回トップバッターになった理由は、5月5日のこどもの日ということで復活した子供ばんどが絶対ライブやるだろうから、それ見るために夜空けときたかったからだって。でも結局ライブはなかったという悲しい結果に。

最後は「それではもう1曲…」と「イージュー★ライダー」で締めるかと想いきや、HiGEの須藤からのリクエストということで「ヒゲとボイン」で締め。民生とHiGEでヒゲとボイン。ややこしい。中盤で披露した「カヌー」は歌えなかったという須藤だけど「これは歌いたいんでしょ?」と民生に言われ、嬉しそうに「はい!歌いたいっす!」と答えると1番を熱唱。会場も一緒になって合唱して、しっかり盛り上がって終了。

TRICERATOPS

2組目はTRICERATOPS。今日は凄いゲスト呼んでるけど、まずは俺達の曲で踊ってくれと、トライセラの3人でいつも通りの踊れるステージを展開。中盤に差し掛かったところで「それではスーパースターを呼びたいと思います」と、ゲストの藤井フミヤが呼び込まれた。

フミヤはうちの姉が大ファンで、実は10年以上前に1回だけ一緒にライブ行ったことがある。だから見るのは2回目だったんだけど、その時から変わってないキレのある動きだったな。何度もターンを決めたり、足を蹴り上げてみたり、銃のトリガーガードような輪っかがついたマイクを回したり、倒したマイクスタンドを足にかけて引き起こしたりと、こんだけ堂々とカッコつけられると気持ちがいい。

藤井フミヤなんで手土産がわりにと歌った「TRUE LOVE」は、トライセラによるバンドアレンジで原曲よりも力強い感じだった。曲の内容から言うとちょっと強すぎる気もしたけど、これはこれで面白かったな。

その後は、折角来てるからとフミヤが直接電話して出演依頼したという民生がシークレットゲストとして再び登場。2回目なのでシークレットと言っていいのかどうか疑問だけど。

演奏したのは民生がフミヤに提供した曲「嵐の海」。民生と和田唱のギターの掛け合いにフミヤがハーモニカで参加してかっこよかったんだけど、合わせるのが完全にぶっつけ本番だったということで、演奏しながら民生が「これどうやって終わるの……」とつぶやく場面も。

結局最後は、和田唱がお手上げとばかりに両手を上げたあとドラムに指示を出してフィニッシュ。終わったあとは、民生がよくやる両手を広げておどけるような仕草を挟みつつ、みんなと握手して退場。みんな楽しそうでいいセッションだったな。

ちなみに民生は和田からもらったリハの音源を聴いて、この日の朝7時から練習したんだとか。プロですなぁ。


続くTHE BACK HORNは、この先を考えて完全に休憩タイム。飲食エリアのベンチに座って聴いてたんだけど、おじいちゃんが小さく手を振って踊りながら歩き去っていったのが印象的だった。フェス来るとたまにじいちゃんばあちゃんがいるけど、あれ凄いよね。

真心ブラザーズ

4組目は真心ブラザーズ。「サマーヌード」で幕を開けると、2曲目にして早くもゲストの松たか子が登場。

非常に異質な組み合わせで、どこに接点があるんだろうと思ってたけど、去年の「Soul of どんと」で共演したのがきっかけとのこと。そこでの松たか子のパフォーマンスが素晴らしかったから、松たか子かっこいいんだぞってのを見せたかったんだって。松たか子を「松っちゃん」って呼んで、やけに親しそうな雰囲気のYO-KINGだったけど、最初にあった日からもう松っちゃんって呼んでたんだって。完全に松たか子寄りなYO-KINGに、桜井さんが悔しがってた。

ロックンロールと言えば、ということでキャロルの「ルイジアンナ」のカバーを披露。続く「拝啓、ジョン・レノン」での松たか子のコーラスが良かったな。そのあと松たか子がセンターに立って、清志郎が日本語詞をつけてカバーしたPPMの「500マイル」を、真心2人のギターをバックにしっとり歌い上げて退場した。松たか子には全く興味ないんだけど、確かに歌うまかったし良かったな。

更に、実はもう一人ゲストを呼んでますと登場したのは、まさかの本日3回目となる奥田民生。「はじめまして」と登場すると「もう恥ずかしい通り越して。ね。」と吹っ切れた感じの爽やかさ。

もう出ないよと念を押しつつ演奏したのは、真心と一緒に作って今度発売するシングルで、ディランのカバー「My Back Pages」と、合作で作ったというカップリングの「絵」。

最後は帰ろうとする民生を引き止め、松たか子も参加して全員で「空にまいあがれ」。民生がSMAの顧問であることを引き合いに出して、YO-KINGに「顧問JAM」なんて言われてたけど、確かにそれくらいの活躍っぷりだったな。

仲井戸麗市BAND

5組目は仲井戸麗市BAND。ゲストがなんとCharということで、個人的に今回一番楽しみにしてたステージ。

今回はいつものメンバーであるカースケさんと早川さんに加え、キーボードにDr.kyOnが参加。まずはインスト曲で幕を上げると、レイ・チャールズの「What’d I Say」のカバーに突入。「今日はいったい誰とJAMろう」と日本語詞を乗せて盛り上げると、普段やらない曲を練習してきたんで聴いてくれとストーンズの「Let’s Spend the Night Together」を披露。みんなの英語力は高くないと思うんで適当な日本語の歌詞をつけてきたと、チャボさんらしい日本語カバーバージョンだった。更にSLSでも披露してたジミヘンの「Little Wing」のカバーも演奏したところで、いよいよゲストタイム。

17歳で無免許でバイクに乗ってるギターのうまい子がいるって聞いて出会ったんだと紹介されCharが登場すると、挨拶代わりに始まったのは「Crossroads」。原曲はロバート・ジョンソンだけど、これはクリームのカバーのカバーってところだろう。途中から「I went down to the crossroads」って歌詞を「I went down to the 幕張」に変えて歌ってた。

「A Hard Day’s Night」や、前回共演した際にやったという「Love In Vain」を披露したあとは、チャボさんの「Free Time」で締め。合間の掛け合いでは「こいつー」って感じで肩で小突き合ったり、互いのギターに手を出して音を鳴らしたり、今日の出演者の中で一番子供っぽくて終止無邪気に楽しんでる感じだったな。

多分このフェスが1番見せたいと思ってるであろうJAMの楽しさを、誰よりもストレートに分かりやすく実践してた最高のステージだった。それと、途中何度も「マイ・オールド・フレンド!」「日本のロックの宝」と言うチャボさんが印象的だった。

それにしても2人ともギターがセクシーすぎる。Charに至っては、もはやエロい。個人的には3日間通してのベストステージだったな。

ZAZEN BOYS

JAPAN JAMもいよいよ大詰め、残り2組というところで登場したのはZAZEN BOYS。前回は坂田明と山下洋輔をゲストに向かえ、濃いーセッションを繰り広げたZAZEN。今回のゲストはサックス坂田明、トランペット近藤等則、そして七尾旅人ということで、前回に負けないくらい濃いものになるのは明らか。

セッティングの段階から全員登場すると、一旦舞台袖に引っ込むことなくそのまま本番スタート。いつものように「幕張、時には女とまぐわり」という向井秀徳の向上につづいて始まったのは、童謡の「赤とんぼ」。

赤とんぼをやると事前に告知されてたときは、全く想像ができず「は?」と思ったけど、実際聞いてみると予想通りに想定外というかなんというか。凄まじかったな。

冒頭から七尾旅人の声が作り出す不思議な空間で向井さんがゆっくりと静かに「赤とんぼ」を歌い始めたかと思ったら、突然激しく鳴りだすドラムとともに混沌を極めるバンドの音。そしてまた訪れる平穏。そして混沌。

さっきのチャボさんとCharのセッションは友達同士肩を組んで笑い合ってるイメージだったけど、こちらはライバル同士が闘志むき出しで牽制し合ってる感じ。今まで聴いてきたセッションは、即興であっても聴いてる方も次はこんな感じの展開をしてくんだろうなと大まかな流れを把握できたりするもんだけど、これは全く予想できなくて常に緊張感が張りつめてる。これだけで20分近くやってたんじゃなかろうか。

その後「COLD BEAT」「東京節」、そして七尾旅人×やけのはらの名曲「Rollin’ Rollin」も披露。そのすべて個々の個性むき出しで想定外のセッション。特にゲスト3人の自由っぷりが凄かったな。ZAZEN BOYSという土台の上で好き勝手遊んでるって感じだった。

「COLD BEAT」では間奏でバンドの音が止まる中、トランペットとサックスがゆったりと、そして不穏な音を鳴らし続け、そこに向井さんと旅人さんが探るように声を乗せていく。その様はまさに冷えきったビート。

冷たい緊張感が会場を包んでたんだけど、向井さんの「女の股ぐらの奥の奥の塊取り出して」という言葉を旅人さんが輪唱しつつ「何歌わせとんねん〜」っと突っ込んでみたり、向井さんが突然「DA PUMPに踊りでも踊ってもらおうか〜……EXILEでもいい」と妙なこと言い出して笑いが起こる場面も。

ZAZENのライブでは馴染みの、向井さんの指揮で各楽器が音を出してくシーンでは、突然振られた近藤さんが、音を出す準備をしてなかったために手を広げてアクションで応えるという、これまたコミカルなセッションもあった。

最後は「CRAZY DAYS CRAZY FEELING」から祭り囃子に展開して、みんなで踊ってものすごく濃いステージが終了。相変わらずのとんでもないインパクトのあるステージ。ZAZENはもうJAPAN JAMレギュラーでもいいんじゃなかろうか。

エレファントカシマシ

今回の大トリはエレファントカシマシ。ゲストが仲井戸“CHABO”麗市泉谷しげると、これまた豪華。

まずはおなじみのサポートメンバーである蔦谷好位置とヒラマミキオを加えた6人でエレカシのステージを展開。「悲しみの果て」や「風に吹かれて」などのスタンダードナンバーをやったあとは「てめーらバカヤロウ!……そんな歌です」と「ゴクロウサン」を演奏。RCっぽい雰囲気もあるこの曲は、ゲストを意識しての選曲だったんじゃないかな。

そして「凄いぞ。俺は一緒にやってるから特に分かるけど、ほんと凄いぞ」と若干興奮気味のみやじに紹介されてチャボさん登場。チャボさんを向かえてRCのカバーをやるだなんて、なんて贅沢なんでしょう。みやじに落ち着きがないのはいつものことだけど、いつもに輪をかけて落ち着かないようにも見える。

まずは「ブン・ブン・ブン」を演奏すると、続いては「スローバラード」。どっちもみやじにハマってたな。「スローバラード」でのチャボさんのギターとみやじのボーカルのやり取りが素敵だった。

続く「君が僕を知ってる」では、最後の「わかっていてくれる〜」ってところで、「わかってんだよ!」と歌いながら、なぜかヘルメットを被った泉谷しげるが登場。歌が終わるや否や、ヘルメットを脱ぐと「てめーらこのやろう!」と客を威嚇。繰り返し叫ぶ泉谷さんを「ちょっと待ってちょっと待って」とみやじが冷静に制して泉谷さんを改めて紹介。

「次の曲は黙って聴いてろよ。難しいんだよ。手拍子なんかするんじゃねーぞ。お前らのバラバラな手拍子は邪魔なんだ。難しいアレンジしやがってこのやろう」と、実に泉谷さんらしい悪態を散々ついてから始まったのは「春夏秋冬」。難しいアレンジってどんなだろうかと思ったら、チャボさんも参加してた泉谷さんのバンドLOSERでセルフカバーしたバージョンをベースにしたアレンジだった。ドラムがタッタカタッタカとリズム刻んでたんだけど、終わってからも「ったく難しいアレンジを…タッタカタッタカいいやがって」としつこく愚痴ってた。

続く「翼なき野郎ども」では、始まる前に「俺にリードギターやらせろ!どうだ仲井戸、これが先輩風だこの野郎!」と宣言したにもかかわらず、間奏でみやじが石くんに振ってしまったため泉谷さんのギターソロタイムが半分に。終わったあとで「俺がリードだっていったじゃねーかコノヤロー!せっかく練習してきたのに半分になっちゃったよ」と責め立て、しつこく愚痴る泉谷に「スイマセン、俺が間違えて……。総合司会が混乱しています」と謝るみやじ。

続く「チャンスは今夜」では、サポートのミッキーまで含めた4人によるギターソロの応酬。みやじが石くんをチャボさんの元までひっぱっていって「勉強させてもらえ!」なんて言われる場面もあったけど、チャボさんと並んで張り合う石くんがかっこ良かったな。

そして本編最後は「ガストロンジャー」。まさかこのメンバーでやるとは思ってなかったけど、これは良かった。2番の「俺が生まれたのは高度経済成長の……」という所を泉谷さんが担当して「俺が生まれたのは60年代だよ!このやろ!ふざけんじゃねぇ!放射能には負けねー!」と怒りをぶちまける。確かに相性ばっちりだったなと思ってたら、間奏でチャボさんのギターが入ることで、今度は全く違う曲になってしまったような妖艶さが加わってゾクゾクした。

ここで本編は終わり一旦退場かと思いきや、帰りかけた泉谷さんがみんなを呼ぶような手振りをしながらステージ中央に引き返し始めた。何だろうと思ったら「早く出てこいよ、どうせやるんだから。なんでこいつらのアンコール待たなきゃいけないんだよ」とやる気満々。更に「なにやってんだー やめとくれー 放射能はいらねー」と、アカペラでラブミーテンダーの替え歌を歌い始めた。

「なにやってんだー やめとくれー 牛乳飲みてー」とひとりで歌い続けていると石くんが登場して、なぜか全力でコマネチを披露。多分みやじに指示されたんだろうな。

それに続いてメンバーが次々と登場。みやじが「みんな相手しちゃだめだよ。泉谷さん勝手にこういうことするからなぁ……」とボヤキながらも「日本で1番有名なロックナンバーです」と曲紹介。みやじの「OKチャボ!」という掛け声で始まったのは、もちろん「雨あがりの夜空に」。

何がかんだ言ったところでこの曲は盛り上がるし、締めにはもってこいだ。まさにトリを飾るにふさわしいステージだった。

これはJAMなのか?ってステージもあったけど、全体通してやってる人が楽しそうなのが印象的なフェス。あまり身内ノリになりすぎないことを祈りつつ、心は早くも来年の3回目を期待している。楽しみだ。

〜おしまい