SUMMER SONIC 06

2日目

2006年8月13日 9:00

2日目はまず物販で買い物を済ませると決めていた。去年は会場を出た後、外で寝てしまったため出遅れて行列に並ぶはめになったけど、今回は反省をふまえメッセ内に留まることに。そこら中に死んだように転がっている人の間を抜け、入口付近で横になり再び休息を取る。

8時前くらいから整理が始まり、入口前には早くも行列ができ始める。今回は入口ゲートの2m程のところに陣取る事ができた。後ろがどうなってるのかは見えなかったけど、過去の経験から尋常じゃない行列ができていることは容易に想像がつく。

開場時間が来ると、混乱を避けるため行列のままスタッフに誘導され会場に入れられる。階段を下りたところまでかと思ったら、そのまま2ホール分先の物販まで連れて行かれるらしい。まぁ殆どの人が物販目当てだろうからこれは正しいと思うけど、横に10人程並んだ行列が誘導され、ひたすらゆっくり歩いて行く様は「捕虜」以外の何者でもない。

先頭集団のまま物販に入り、唯一欲しいと思った目当てのオフィシャルTシャツを購入。ついでにABC-MARTのブースに行き、サマソニ会場でのみ販売のVANSのOLD SKOOL限定モデルを購入。赤と黒で、踵にはROCKの文字。イカス。かさばる荷物をまとめてロッカーに預けると、シャトルバスに乗りマリンスタジアム方面へ移動。

11:00

2日目の幕開けはマリンステージで迎えることに。去年まではグランドへ行く場合でもスタンド側から入りグランドへ降りるようになっていたけど、今年はスタジアムが改築され客席が増えたため、グランドへ下りる階段が無くなってしまった。そのためスタジアムとグランドの出入口は別。グランド側はどうか分からないけど、スタンドに入る分にはこの方が混まなくていい。

刺すような日差しを避けて1階上部の日影にとこに腰をおろしたけど、日影でも十二分に暑くてじっとしているのさえ億劫だ。

スクリーンに流れるCMを2回ずつ見た後で、毎年MCを勤めるサッシャが登場。注意事項を伝え、客を煽ったところで本日の1組目を呼び込む。それにしても、ああやって大観衆を煽るのはかなり気持ちが良さそう。一度でいいからやってみたい。

今日の1組目は10YEARS。全く知らなかったので、名前の感じから勝手にPOP系の音だと思っていたのに、サッシャのKOЯNのオープニングアクトも勤めたという説明で、全然POPではないと悟る。

早くも沸き上がる客に迎え入れられ10YEARS登場。予想通りのヘビーサウンドを少し聴いてからビーチステージへ移動。

ビーチステージの1組目はHAZAMA SHIGEMI a.K.a. 間 寛平&Up Up Setters。間寛平が本名の間重美名義で、レゲエ歌手としてエイベックスからデビュー。レゲエバンドのTUFF SESSIONがバックを勤める本格的活動だ。

1曲目を歌い終えたところで、盛り上がる観客に気を良くしたのか「いくつになっても暴れん坊」が飛び出す。自分でやっときながら、客にギャグをねだられると、後でエイベックスの人に怒られるんだと渋る。今回はレゲエシンガーとしてやっているのでギャグは禁止されているらしい。

そうはいっても、お笑い芸人がこれだけ湧く客の前で何もしないでいれるわけもなく「アメママン」と「かい~の」を立て続けに全力で披露。その後、歌手に戻り真面目に歌うも、メンバーとのやり取りで「それじゃこの曲で間重美がいかに本気かということを見せてやりましょうよ」「誰がモンキーやねん」と、本質はそう簡単に変わらないことを露呈させる。

3曲だけの短いステージが終わったあとアイランドステージへ移り、日影になっている芝生の上で休憩。ステージでは次の出番の中ノ森BANDがセッティング中。マイクチェックを終えて「よろしくお願いしまーす」と言ったので、セッティングが終わったのかと思ったら次のマイクへ。再びチェックが済むと「よろしくお願いしまーす」。結局3回お願いしますを言う。丁寧というより、条件反射的にとりあえず言っている感じがしてイライラする。1回で済ませ。

13:00

中ノ森BANDの始まりを待たずにアイランドステージを後にすると、メッセに戻りひとまず昼食。チキンライスを注文すると、パサパサのご飯の傍らに大振りなチキンの乗ったものとスプーンを渡される。今私に必要なものは、どう考えてもフォークだ。チキンをスプーンで押し込むようにして平らげると、BOOM BOOM SATELLITESを見るためにマウンテンステージへ移動。

メンバーがステージに立ち、はじめの音が鳴った瞬間からそこは強制ダンスフロアと化す。MCもなく、畳み込むように次々と繰り出されるリズムの波に、体は自然と動き出す。この音撃から逃れるにはフロアを出るしかないけど、ビートを刻む足は言うことを聞いてはくれない。散々踊らされてステージ終了。あっという間だったような気がしたけど、疲労は確実に体に刻まれた。

このままマウンテンステージに残り、WE ARE SCIENTISTSを見ようかと思ったけど、外に出たい気分だったのでBEAT CRUSADERSを見るためにビーチステージへ移動。

14:00

スタジアム前に着くと、キュウリを丸ごと1本割り箸に刺したものを食べている人を何人か目撃。もの凄い食いたくなって売ってる店を探すと、千葉県産浅漬けキュウリ1本100円の看板を発見。1本購入し、旨すぎて一気に平らげる。早くも昨日の冷やしとろろ昆布茶漬けを抜く。ジャンクフードがあふれる中では、こういうシンプルなものがたまらなく旨い。

ちなみにキュウリは小さいのが100円で大きいのが150円。購入の際、小さい方を指差してこれくださいと100円を差し出すと、店のおばちゃんが目も会わせずに「サービス」と呟きながら大きいキュウリと千葉県の農協かなんかの携帯クリーナーを手渡された。おばちゃんは、こちらの「ありがとう」という言葉もスルーして、ひたすら仕事に没頭。サマソニの会場で職人に出会った。

ビーチステージ前では、只今入場規制中とのアナウンス。何か面倒臭くなったので向かいのアイランドステージに入ると、SPARTA LOCALSが演奏中だった。踊りたくなるノリのいい曲。体が疼いたけど、今いってしまったら体力が持たないと思って後ろに引く。前線にいる人たちは本当に楽しそうに踊っている。こんなの見たら我慢できなくなるので、後ろの木陰でステージの方を見ないようにして音だけを楽しむ。

じっくりと体力を温存したところで、続いて登場するのは本命のGreat Adventure。前回サマソニでライブを見て完全にハマったんだけど、今回は彼らの後マウンテンステージでARCTIC MONKEYSをやるので、かなり迷った。

ARCTIC MONKEYSは多分入場規制が掛かるだろうから、Great Adventureを最後まで見ていたら入れなくなる可能性は大。最後まで悩んでいたんだけどセッティングの時にジャムり始める彼らを見て、すっかりARCTIC MONKEYSのことは飛んでしまった。前回もそうだった。彼らの音は、この段階でやられてしまう。

リズムマシーンの音に呼び込まれドラムのNOMOTO、ベースのTARUMIとステージ上がり音を重ねていく。早くも強力なグルーヴが会場を浸食していく中、ボーカルのOTAがテルミンを手にしてアンテナを降る様は、まるで「さぁ、俺たちについてこれるのか?」と、客に挑戦状を叩き付けているようだ。

日本人だけど歌詞は英語。MCも全て英語。そしてロック、テクノ、ファンクあらゆるものを飲み込んだ音を鳴らす彼らのステージはまさに無国籍。途中披露した新曲は、これで踊らなきゃ何で踊るんだと言わんばかりのノリで、太陽が照りつける中、後の体力など考えずひたすら踊るのみ。

最後は長い長いアウトロの中、ベースのTARUMIが最後まで残り、去年見た時と同様まっすぐな三点倒立をしてフィニッシュ。あっという間のステージだった。

16:40

アイランドステージを出ると、すぐにシャトルバスに乗ってメッセへ。急いでマウンテンステージへ向かうも、案の定入場規制。幸いステージは到着してすぐに始まったとこのようだったので、中に入ろうと入口通路前に出来た人ごみの後ろで待機。

出口前で待っていると辛うじて音が聞こえるけど、入口前では他の音に消され全く聞こえない。暫く大人しく待ってたけど、2曲程終わった頃に開きそうもないシャッターに見切りをつけて違うとこに行こうと踵を返した途端にドアが開く。

ARCTIC MONKEYSが演奏するマウンテンステージのフロアは、大トリのステージのように人であふれていた。疲れていたので後ろの方でまったりと聴いていたけど、フロアは大盛り上がり。途中みんなが跳ね出した時には会場の床が揺れていた。いいステージだったけど、このバンドは大きいホールより小さい小屋の方が似合う気がする。これくらいの大きさが限界だろうか。

17:30

当初の予定では、ここでマリンに移動してMUSEを見るつもりだったけど、外に出るとシャトルバスに乗るための列が異常に長くなっていた。今は良くても、MUSEのあとすぐにメッセに帰ってくる予定なのが戻れなくなりそうだったので、メッセに留まることに。

マウンテンステージでは、LINKIN PARKのマイク・シノダが作ったヒップホップ・プロジェクトのFORT MINORがプレイ中。マイク・シノダは、この後マリンステージに移動しLINKIN PARKとしてステージに上がることになる。やる気満々。稼ぐ気満々だ。

ステージはなかなか良かったけど、ケータイで話しながらステージを出て行くブライアン・バートン・ルイスを発見して、ついつい後を追ってステージを後にしてしまう。この人は毎年見るので一方的に知り合い感覚である。

飲食エリアの手前の喫煙エリアで友人らしき人と合流するのを見届けると、心の中で彼に一方的に別れを告げてソニックステージへ。

ソニックステージのセミファイナルはBUCK-TICK。これが発表された時、多くの人がこう言っただろう。「何で?」と。何故BUCK-TICKなのか。セミファイナルでいいのか? いや、多分この違和感は後に控えるトリがTOOLだからだろう。TOOLの前がBUCK-TICK。なんだこれ。

疲れていたので、BUCK-TICKの演奏中は殆ど寝て過ごす。終了後、思ったよりも捌けて行く客に逆らって少し前に進むと、床に腰をおろしてTOOLの登場を待つ。

ステージには要塞のようなドラムセットが登場し、次々とセットが組まれていく。TOOLは、本国アメリカでは人気のあるバンドだけど、日本での人気はいまいち。実際客の集まりもトリのわりには大した事がない。

多少難解な彼らの音楽は、確かに広く一般受けするようなものではないかもしれない。そんな彼らのアルバムが1500万枚も売れているというとこを考えると、アメリカという国もいいとこだと思えてきてしまう。

19:30

TOOLのステージはまさに圧巻だった。変拍子が絡み合い、時にそれぞれのパートが違うリズムを刻んでいるようにも感じるけど、それががっちりと噛み合って、ひとつの固まりとなっている。まるで何種類ものジグソーパズルから寄せ集めたバラバラのピースが奇麗につながり合い、ひとつの作品として成り立っているような不思議な感覚を伴って音が押し寄せてくる。

シンプルな4人編成のバンドだけど、ボーカルが前にいてドラムが後ろというわけではなく、それぞれのパートが横一列になっているこの並びが、このバンドの音を現しているようだった。時に優しくフワフワ漂うようであり、時に力強く響くボーカルのメイナードの声は、ひとつの楽器としてバンドにとけ込んでいる。

これはまさに、メタルでもプログレでもなくTOOLという音楽。後ろに並べられた4枚のスクリーンには、暗鬱な雰囲気を漂わせるPV等の映像が映し出され、その前に立つメンバーのシルエットは神秘的にすら見えた。

全ての要素が高い完成度で噛み合った、文句なしの素晴らしいステージ。演奏終了後、ステージの前に出てきて互いを讃えるように握手をするメンバーの姿が印象的だった。

21:00/p>

最後にマウンテンステージで演奏中のMassive Attackを見ようと思ったけど、最後までいると尋常じゃない帰還ラッシュに巻き込まれるので、ロッカーから荷物を出すと、そのままメッセを後にする。

既に人だらけの駅への道。去年までは満足感と終わってしまった寂しさに包まれていたが、今年はそれに加えてやっと一休みできるという気持ちがどこかにあるのは、年のせいじゃないと信じたい。

日焼けして赤くなった腕をしげしげと眺めていると、隣りにいる女の子二人の会話が聞こえてきた。「それでさー、バイトの初日か何かでさー、集合が5時か何かでー」

全部何かじゃねーか! 初日か何かって、初日以外に初日っぽい日はねーよ!

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