JAPAN JAM 2010

今年初めて開催されるロッキンオンのフェス。その名の通り、ジャムをテーマに普段のライブとは違う内容になるということで、面白そうだと参加を即決。

1回目ということで、全てばっちりってことはなかったけど、そんなことは気にならないくらい凄いステージ連発で最高だった。

1日目

2010年5月15日(土)富士スピードウェイ

まずはロッキンオン主催による他のフェスと同様、LED ZEPPELINの「The Song Remains The Same」で渋谷陽一氏が登場して朝礼。

会場の富士スピードウェイは夕方からの冷え込みが厳しいらしい。渋谷さんは「今日は究極の雨男、吉井和哉がいないんで天気は大丈夫」なんて言ってたけど、開演時刻の11時の段階で既に寒かった。空は晴れて陽は出てるけど、空気が冷たくて風があるので体感温度が非常に低い。

でも何より厄介なのは気温差。陽が出てると暑いくらいなのに、太陽が雲に隠れた瞬間、冗談のように寒くなる。これには参った。

もうひとつ参ったのはスケジュール。交互に演奏が行われる2ステージ制ということ以外、詳しいスケジュールは発表されてなかったんだけど、ここで渋谷さんの口から告げられたのは、まさかの内容。

「ステージ間移動が5分かかるんですが、こっちのステージが終わってから向こうが始まるまでの間が5分です。実際の移動は混雑等があるんで10分くらいかかるんですが、みなさんには何とか頑張ってもらって、是非すべてのアーティストを見てもらいたい」

いや、無理無理。

客入りに関しては、渋谷さんによると「ここは5万人入るんだけど、ここにいる人がひとり4人ずつ連れて来てくれるといっぱいになる」くらい。確かに人はいなかった。

会場は富士SWだけど、今いるのはサーキットの下にある駐車場だか何だかよくわからない、だだっ広いスペース。全面舗装されて何も無いからか、人がいないのが余計際立ってた気がする。

LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS

初めてのフェスの1発目はLOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS。LOW IQ 01は、前にちょっとステージ見たことあるって程度の認知度だったんで、正直さほど期待はしてなかったんだけど、思ってたよりは良かった。

客の「カッコイイー!」の声に「うん分かってる。だからここに立ててるんだと思うよ」なんて調子良く答えながら、前半は通常通りのステージを展開。そして終盤はお待ちかねのゲストコーナー。

ストレイテナーのホリエアツシ、ACIDMANの大木伸夫、10-FEETのTAKUMA、そしてBRAHMANのTOSHI-LOWと、次から次へとゲストが登場。昔のバンドの曲をやってるらしいけど、曲を知らないから「おぉ!あの曲だ!」という感動は皆無。この手の企画の欠点は、これだろうな。

普通のライブなら曲を知らなくてもお約束が分からない程度で済むけど、こういう企画で曲を知らない場合、取り残された感がなかなか大きい。確かにゲストは豪華で、特に上半身裸で登場したTOSHI-LOWは圧倒的存在感でかっこ良かったけど、あの曲が生で聴けた!みたいな感動は無かったし。

終了後、すぐに移動を開始したんだけど、ステージの出入口が小さくてバッチリ詰まってた。2ステージ交代制ってことは、基本的にほぼ全員移動するわけで、ここは大きな課題だろうな。

今回は幸か不幸か客入が少なかったからいいけど、満員だったら動けないくらい詰まると思う。

BEAT CRUSADERS

移動が終わらないうちにステージはスタート。この分だと移動がかなり大変そうだということで、今のうちに一先ず休憩タイム。後ろのシートゾーンで座って半分寝ながら耳を傾ける。

ゲストはTROPICAL GORILLA、WISE、高橋瞳、ELY(BREMEN)、磯部正文と盛り沢山だけど、誰ひとりわかりません。ビークルは普段聴かないし、ぶっちゃけ特に何も印象に残ってないな。

こういう「知ってるけど普段聴かない」ってバンドは、自分の中のスイッチ切っちゃうと全然入ってこない。ブルーハーツの「青空」のカバーやったんだけど、正直いまいちだったし。

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND

ビークルを途中で切り上げて移動したんだけど、開始には間に合わず。そんな状態だから、最初のうちはかなり人が少なかった。

かつてこの場所で開催され、海外の豪華面子を集めつつビックリするほど人が来なくて伝説となったウドーミュージックフェスティバルを彷彿とさせる光景。

マーティンは「フジヤマ!サムライ!ニンジャ!吉牛!……おいしいよね」と、笑いを誘いつつも「OAUとCoccoが一緒にやるなんて考えたとこ無かったけど凄くいいよ」と期待させる発言。いや、そんなこと言われなくても十分期待してるんだけどね。

ステージ終盤、改めてマーティンに紹介されてCocco登場。何だか申し訳なさそうにゆっくり歩いてくると、開口一番「CoccoとOAUは友達じゃないのよ。OAUの曲も知らないし……でも渋谷陽一が勝手に決めたから……」と、いきなり不満をぶちまけ始めた。

「友達じゃないし、まだ歌もちゃんと覚えれてないし、ブーツの中にホッカイロ入れたままだし…」と、途切れ途切れながらも言葉は止まらない。

「人前に出るような状態じゃないのに、申し訳なくて……」と泣きながら話を続けたんだけど、その間何度も「渋谷陽一が勝手に決めた」を強調していた。どんだけ渋谷陽一に恨みがあるんだ。

会場からの「頑張れー!」の声に「勝手な事言うな!」と切れつつも、「友達じゃなくても音楽をやってれば、こうやって一緒のステージに立てるから」と、最後はOAUのメンバーに向かって「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」と挨拶して、セッションスタート。

こんな状態で本当に大丈夫かと少し心配になったけど、唄い始めた途端、さっきの涙は何だったんだと思うくらい、まったくの別人になってた。

この人凄い。頭の中には歌唱力とか表現力とかいう言葉が浮かぶんだけど、何かしっくり来ない。これは何だと思いながら見てたんだけど、もう魅力としか言いようがない。引き込まれる魅力。

あれだけ落ち込んだ様子だったのに、1曲唄い終える頃にはすっかり笑顔になって、ブーツから取り出したホッカイロを客に投げ入れる始末。

続けて唄った「樹海の糸」も、マーティンが「OAUのアコースティックなサウンドとCOccoの声が凄く合う」と言ってた通り、最初からこういうバンドだったような相性の良さ。

2曲を歌い終え、本当はここで退場のはずだったんだろうけど「もう1曲やるけど、一緒にやる?」と言うマーティンに軽く頷き返し、ドラムの後ろの方に回ってタンバリンを手に満面の笑みで演奏に参加。客に手を振りながら楽しそうにしてる姿を見ると、さっきの涙はネタだったんじゃないかと疑いたくなる。

気がつくと、さっきまで曇っていた空が、このステージの上だけ晴れていた。勝手に決めた渋谷陽一も、ここまで素晴らしいステージになるとは想像してなかっただろう。

途中でステージ脇の道路をパトカーが3台も走っていったんで、何かあったのかと思ったら、終了後のアナウンスで「本日痴漢やスリの被害が多発しています」だって。こんな人少ないのに痴漢って性欲溢れ過ぎだろ!

the telephones

移動し終えたときにちょうど始まったのかと思ったら、既にエレクトリックジャムセッションってやつが終わって、いつも通りのステージが始まったとこだったみたい。全然間に合わなかったってことか。やっぱりタイムテーブルに無理がありすぎる。

まだ昼間だけど太陽が雲に隠れて大分寒くなってきたとこだったので、ひと踊りして体を温めようかとも思ったけど、何だかやる気が出ない。気温差が大きくて調子を狂わされてるみたい。

結局後ろの方で大人しく見てたんだけど、新曲をやる前の「サビは、みんな『ディスコディスコ』言ってりゃ良いんです」というザックリした説明には笑った。

Cocco

さっきはOAUのゲストとして登場したCoccoだけど、今度は単独で登場。さっきのステージとは雰囲気が違ったけど、これまた凄いステージだった。

メンバー紹介の時には「最近はコッキーって呼ばれてます」なんて笑顔で自己紹介もしてたんだけど、後半のMCでは「頼まれた訳じゃないけど、今日は沖縄代表のつもりで、ここにいます。どれだけ届くのか、何が叶うのか分からないけど歌います」という、心にズッシリと響く言葉。

さっきのOAUとのステージでは本当に楽しそうだったけど、このステージは自らの身を削って、さらけ出して、擦り減らしてるようで何だか痛々しかったな。

終了後は「キャー!」と倒れ込みながら絶叫。バンドメンバーに抱えられつつ、何度も絶叫しながら、足元もおぼつかない様子でステージを去っていった。

このステージも渋谷陽一が勝手に決めたのかどうかは分からないけど、想像を超えていたのは間違いないだろう。

このころになると曇る事が多くなり、あまりの寒さに一旦車に退避。そのままストレイテナーをキャンセルして車の中で暖をとると共に、一眠りして休憩した。

PLASTICS

“テクノポップ/ニューウェイヴの世界的草分けである伝説のバンド”らしい。全く知らなかったけど。

正直テクノとかあんま聴かないんだけど、メンバー見るとやたら豪華だし、伝説のバンドの復活となれば話のネタにも是非生で見ておきたいなと。

ステージ前に到着して程なくメンバー登場。でもびっくりするくらい人が少ない。多分リベルタステージがまだ終わってないんだろうけど、それにしたって少ない。登場するなりボーカルの中西さんが「あれ?さっき(リハ)と変わんないじゃん」と言う程、少なかった。まぁ、出演者の並びからしたら明らかに浮いた存在だからなぁ。

まずは中西さんが「Hello, Glastonbury! Are you ready? ……あ、間違えた。Hello, JAPAN JAM! Are You Ready?」と軽いボケを混ぜつつ客を煽る。グラストンベリーは世界最大級のフェスのことだけど、この閑散とした状況だと皮肉に聞こえてまた面白い。

直後、空気をリセットするかのように「I’m not ready.」とつぶやくと、まるでリハの延長といった感じでゆったりと本番がスタート。風船を詰めて歪な形になった不思議なツナギ姿といい、ピコピコサウンドといい、全体を通してとにかく緩かった。

途中でマッドマックスのようなプロテクターやらキーボードを体に装着して演奏したり、まるで学園祭のようで面白かったな。

MCでは、中西さんが何度もギターのハジメさんに、何か喋ってよと振るんだけど、毎回ニコニコしながら軽く受け流されてて、その度に微妙な空気がステージを包む。もういちいち学園祭。

客の少なさからか、PLASTICSのライブ動員最低記録は2人だったという話になると、佐久間さんが声高らかに「俺の最高記録、幕張で20万!」と宣言。それに「それGLAYだろ」とすかさず突っ込むメンバー。

更に豪太さんが「ブラジルで80万人!」と言うと、「それシンプリーレッドだろ」と突っ込まれる。メンバーは笑いながらじゃれてる感じだったけど、そんだけ凄い面子が集まったバンドだということだ。なのにこの状況。ステージ脇の富士SWの道路をパトカーが走っていく絵が何ともシュールだった。

後半、客が増えてくると中西さんが「ちょっと増えてきたね。いろんな人が来てくれて……。あ、飯島愛ちゃん」と、突然謎の発言。それに、中西さんの奥さんでもあるボーカルのチカさんが「何が見えてんのよ」とすかさず突っ込む。これには、頑に黙ってたハジメさんも「夫婦漫才してる場合じゃないよ」と大笑いしてた。

本当に何が見えてるのか分からない中西さんは、続いて亡くなったんであろう人の名前を呼びながら、客席を指差し手を振り始めたんだけど、明らかに俺の方を指差してる。中西さんはサングラスしてて目線は分からなかったのに、客が少ないから、はっきりと分かった。間違いなく俺だ。しかも結構しつこく手を振ってきてる。

この場合、手を振り返しでもした方が良かったのかもしれないけど、俺のセンサーが、このグダグダの空気で絡んだら火傷するぞと警報を発したので、気づかない振りをしといた。中西さんの発言にメンバーは「怖いよ怖いよ」なんて笑ってたけど、一番怖かったのは俺だ。

終盤、クライマックスっぽい感じの曲で最高に盛り上げたあと、中西さんが「Good night!」とステージを去ろうとしたんだけど「あれ、まだ終わりじゃなかったっけ?」という締まりのなさ。

「もうやらねーよ。さっきのが最後だと思って体力使っちゃったよ」と嘆く中西さんに、「きさま、敵前逃亡か!」とハジメさんが気合いを入れ、最後の曲がスタート。

最後は「Good night!……で、いいんだよね?」と確認して終了。そのままステージを降りるかと思ったら、最後に一言言えとハジメさんがメンバーから詰め寄られ、何故か嫌がり続けるというグダグダのやりとりがスタート。その横では「それ長い?帰っても良い?」と中西さん。

結局「また是非呼んでください」とハジメさんが挨拶して終了。もう最後の最後までグダグダで、楽しませてもらいました。

10-FEET

寒さのせいか、やけに疲れたのでACIDMANをパスして、モビリタステージの前で10-FEETのリハを見学。リハでよく他の人の曲をやることがあるTAKUMAだけど、今回はエアロスミスの「Eat The Rich」のイントロをやってた。

マイク前で話しながら「打ち合わせ聞くなよ」などと言いつつ、ゲストのつじあやのと軽く曲をやってのリハを終えると、もうひとりのゲスト渡瀬マキが登場。なんか曲をやるのかと思ったら「あーあー」と簡単なマイクチェック。「音?よく聞こえます。……これでいいの?」と言う渡瀬さんに「聞こえますか。良いと思います」と答えるTAKUMA。

「凄い良く聞こえます」「はい、良いと思います」と、向かい合って三文芝居のようなやり取りが終わると、渡瀬さんは退場。程なくしてリハは終わったんだけど、メンバーみんなリハの時からやけに楽しそうにしてたのが印象的だったな。特にTAKUMAは、ずっと笑顔だった。

リベルタステージの演奏も終わって人が集まってきたところで、いつもの出囃子が鳴りメンバー登場。「寒いから暖めるんだよ!」と煽るTAKUMAに負けじと、のっけから最高に盛り上がる会場。その光景に「ヤバいな、おい!この時期…この気温…この場所で…ライブで…ワーワー言うて。大丈夫か」とTAKUMA。

ゲストコーナーでは、まずつじあやの登場。以前コラボしてたのは知ってたんだけど、初めて聴いて予想外のハマりっぷりに驚いた。やったのは「LOODY」と「recollection」の2曲だったんだけど、どちらもウクレレとつじあやのの声がやけにしっくりきてる。

TAKUMA曰く「生乾きの洗濯物に柔軟剤使ったような」爽やかさをステージに残して、つじあやの退場。入れ替わりで渡瀬マキが呼び込まれ、なぜかクルクル回って阿波踊りのような踊りをしながら登場。これには流石のTAKUMAも「テンション高っ!」と笑ってた。

「今すぐの曲いくよー」と始まったのは「今すぐKISS ME」。TAKUMAが「昔、琵琶湖を自転車で一周したときに、ずっとリンドバーグとシティハンターのサントラ聴いてた」らしいので、ファン故のコラボだったんだろう。メンバー全員が楽しい!と大満足の様子。渡瀬さんがこの1曲で終わりだったってのは、10-FEETのメンバーがどうしてもやりたかったってことだったんだろうな。

MCではいつもの調子で客を煽ろうとするも「思いっきり騒いで、いっぱい汗かいて、お前らのその汗を、そのぉ……」と、言うことに詰まり「次の曲行きます」と、今のは無かったかのようにステージ続行。ステージ後半でも全くように「お前らのその汗を…」で詰まらせて誤摩化してた。まぁ2回目はボケとしても、1回目はマジだったな。

つじあやのが登場した際も紹介で完全にスベり「今の無かったことにしてください」と言ったり、普段なら一気に盛り上がるようなMCが、うまくまとめられず不発に終わって「ダメだこりゃ」と自分で言ったりと、いつもような締まりがなく別の意味で貴重なもの見た感じがした。

ただ、タンクトップを着てるNAOKIに対しては「(寒いから)半袖はダメだとか、ダウンを着るようにとか言われてたのに、突っ込んでくれと言ってるようなもんや」と、ごもっともな意見。

この企画の話があったとき、メンバー全員何をしようか全くアイデアがなくて困ったらしい。カバーばっかりやろうなんて案もあったらしいけど、結局2人のゲストを迎える事になったと。

カバーばっかりってのも聴いてみたかったなと思ってたら、アンコールで登場すると、この日のために練習したカバーを披露すると言う。期待に胸膨らませていると、始まったのは何とB’zの「Easy Come, Easy Go」。

会場全体が驚きに包まれていると、イントロが終わったとこで演奏をやめてしまい「この曲はいっぱい練習したけどイントロしか出来ませんでした」だって。そりゃそうだと妙に納得していると、大好きな曲をやりますと仕切り直して始まったのはブルーハーツの「TRAIN TRAIN」。

これには会場も一気に沸点到達。一緒に唄ってて泣きそうになってきた。最近ブルーハーツ聴いてなかったんだけど、改めて良い曲だなと。それにしても、ビークルの「青空」に続き、1日に2曲も演奏されるブルーハーツ。スゲーんだな、やっぱ。

ラストは「RIVER」。Dragon AshのダンサーATSUSHIが飛び入り参加で踊りまくったりして盛り上がったあとは、TAKUMAの煽りで会場全体が前から後ろへとウェーブ。前のやつも見たいだろと、今度は全員が後ろ向いて後ろからウェーブ。

ばっちり決まったところで1日目が幕を閉じた。

会場を出たあとは、富士SW付近の温泉に入ってさっぱり。そのあと焼肉屋で飯食ったんだけど、途中でJAPAN JAMのスタッフジャンパー着た人がやってきて、斜向いのテーブルで飯食ってた人達に合流。みなさん今日のスタッフの方々だったみたい。

「今回のテーマは昭和フェスだな」なんて盛り上がってたけど、何だか意味は分からんかった。

腹もふくれたところで、道の駅で車中泊。友人のイビキに苛立ちながら1日目の夜は更けていった。

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