しんぼる

松本人志第2回監督作品「しんぼる」。結論から言うと、まぁ面白かったです。映画として。お笑い的には大したことない。ま、これは「期待してた分」って言葉も含むかな。

以下はネタバレ含みますのでご注意を。

リアリティが無い

松ちゃんが、今回は海外向けみたいなことを言ってたけど、まさにそんな感じ。以前電波少年の企画で松ちゃんが、海外向けコント「SASUKE」っての作ったけど、その延長って感じがしました。実験的な作品って印象です。だから本人的には国内受け悪くても海外受けよければOKってことなんじゃないでしょかね。

アメリカなんかは、これでもかってくらい分かりやすくしないと笑わないとか言いますからね。だから「はい、臭ーい」とか、ああいう分かりやすーい区切りをつけたのかなと。とはいえ、私は当然日本人目線で見ますから、今回のはやっぱいまいちと言わざるを得ない。

基本的にはベタ好きなんで、やってる事自体はいいんですけど、終止リアリティの無さが気になりました。設定じゃなくて演出上のリアリティ。例えば菜箸のところ。

最初は変な部屋に来て不安だったのが、菜箸がいっぱい出るのが面白くなってきて調子に乗って連打しはじめる。この辺はリアルだと思うんですけど、その後台車で脛打ったときの「あっばー!」っていうリアクションは、あまりにコントコントしててリアリティがない。

さっきの「臭ーい」なんかと同様、海外向けだからってことなんでしょうけど、海外ってそんななのかなと。もっと言うと、そんなことしなきゃいけない「海外」ってものに合わせる必要があるのかと。

松ちゃんにしてみたら、俺はこういうこともできるぞみたいなことなんでしょうけど、屁のリアクションとか醤油のとことか、ああいうのは例えば志村けんがやった方が面白くなると思うんですよ。松ちゃんのリアクションは、あくまで平均点って感じがするんですよね。つまらんとは言わんけど、特別面白くない。

ここら辺は、松本人志って人を今まで見てきてイメージが出来ちゃってるからかもしれないですけどね。

絵の面白さ

今回は「絵で笑わす」ってのがひとつのテーマだったと思うんですけど、そこは良かったんじゃないかなと思いました。

レスラーの首が伸びてるとことか、ミュージシャンが直立不動で火吹いてるとことか、単純に絵が面白くて好きですね。火吹きはかなり笑いました。バンドメンバーのメイクも好きですね。あのチョビヒゲみたいなの腹立つわぁ。ほんでドラム眼鏡て。雑すぎる。

松ちゃんは大喜利とかで絵を描く事よくありますけど、お笑い的に凄いうまいんですよね。絵がうまいから面白く描けるかって言ったら、そうでもないと思うんですよ。松ちゃんの場合、デッサンとかは狂ってても、お笑い的に外せないポイントってのは、しっかりと表現してる。あれってなかなか難しいんですよね。松ちゃんのその辺のセンスってのは以前から凄いなと思ってたんですけど、今回もしっかりセンス出てたと思います。

ビビってる?

「大日本人」のときも感じたんだけど、松ちゃんビビってるって感じがします。「大日本人」の「ここからは実写で……」って注意書きなんか絶対必要ないし、今回の「修行」と「実践」ってのもいらないと思うんですよ。無くてもだいたい雰囲気は分かりますからね。最後の「未来」ってのも、やっぱりいらないと思います。そこも込みで観客に委ねてもいいんじゃないですかね。

前作今作共に、俺が表現したいのはこれなんだってものを作ってるふりして、その実他人が評価が気になってしょうがないから中途半端なものになってる。そんな印象を受けました。

分かりやすくしすぎちゃうとつまらないけど、伝わらなかったらそもそも意味が無いってところで、伝わらない事にビビってるって気がします。まぁ、ただの独りよがりだと意味が無いから線引きが難しいですけど。

その割にネタ振りが長いんですよね。それがまた良く分からない。本人にしてみたら、まぁ待てってことでしょうけど、オチまでが緩いから飽きられてもしょうがないでしょう。今回は実践から一気に最後まで加速してきますけど、そこまでの流れが緩すぎる。飽きられるのが怖いなら、もっと見せ方を工夫すべきだと思います。

ここ好き

個人的に好きだったとこは、出口のとこに閉じ込められた時の回想シーン。死を意識しての回想だと思うんですけど、そういう時って普通、昔の楽しかった事思い出すでしょ。子供の頃とか。何を部屋の中で起きたしょーもないことばっか思い出してるんだと。あいつのアホの集大成みたいな感じで良かったですね。

あと、最初のスイッチ押した指の匂い嗅いでからもう1回叫ぶとこも好きですね。あれだけで、こいつ相当アホだなってのが分かりますもんね。もしあれが神様に選ばれたみたいな事だったら、あんだけアホだからでしょうね。変に頭良くて計算できるようなやつは選ばれないでしょう。なんかそんな気がします。

ラスト

あの終わり方ですけど、私は好きですね。気になる事はありますけど。

最初が「修行」で次が「実践」でしょ。「未来」に行っちゃったら、「実践」どうするの? と。あれは「実践」じゃなくて「応用」じゃないですかね。「実践」でやってたことが、まさしく未来を作る事じゃないですか。それをあえて「未来」なんて言うってことは、未来という時間そのものを創造するってことですかね。

個人的には、松ちゃんを仮に被験者として、あれを押すことで新しい被験者が選ばれるって解釈の方がしっくりくるかな。

いずれにしろ、あいつは迷い無く押しにいってるから、あいつ自身は何となく何が起こるか察しがついてたのかもしれませんね。もしくは、何が起こるかはどうでも良くて、自分はただ押すだけっていうことかな。

とりあえず、今のとこビジュアルバムは超えれてないと思います。2作目だし、まだ手探り中って感じじゃないでしょうか。個人的には5作目くらいで傑作出るんじゃないかと思ってるんですけどね。何となく。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です