チャンポン

中学の時「チャンポン」ってあだ名の奴がいたんですよ。本名はK君としときましょうか。K君が何でチャンポンになったかというと、チャンピオンのこと噛んでチャンポンって言っちゃったから。中学生くらいの子供は揚げ足取って、そういうしょうもない事しつこく言い続けるじゃないですか。

最初のうちは馬鹿にする感じでチャンポンって呼んでるんですけど、しばらくするとそれが普通のあだ名として定着してくるんですよね。おかげで、たった一回間違えただけで、以後彼はチャンポンと呼ばれ続ける事になった訳ですよ。

暫くたったある日、担任の先生がホームルームでK君に事について話があるって言うんですよ。何かと思ったら、K君がチャンポンと呼ばれる事を凄く嫌がってると。もうチャンポンって呼ぶのやめなさいと。

その時は、誰もが普通にあだ名としてK君の事をチャンポンと呼んでましたから、最初は何を今更と思ったんですけど、確かに元々馬鹿にするとこから始まってる訳ですから、本人にしてみたら馬鹿にされ続けてる様なもんですよね。それを担任の先生が熱く訴えてるわけですよ。女の先生なんですけど、結構熱くなるタイプでね。イジメるようなことはやめなさい! 言われた人の気持ちを考えなさい! みたいな。

まぁ、こっちとしてもイジメてるつもりはなかったですから、分かりましたと。悪かったなぁということで、その日からK君のことは普通に名前で呼ぶようになった訳です。

それからまた暫くして、グランドホッケーの大会があったんです。世間的にはマイナースポーツですけど、私らの地域じゃメジャースポーツでね。その学校対抗戦みたいなのがあって、K君もその代表メンバーに選ばれてたんですよ。で、その試合を応援しましょうってことで、学年全体で応援に行ったんですけど、私は興味なかったんで、おぅ頑張れよ〜くらいの感じで見てたんです。

うちの担任の先生は例によて必死に熱くなって応援してたんですが、うちの学校のチームは負けてたんですね。1点差だったんですけど、攻められっ放しだし試合も終了間際で、もう駄目かな〜って。そんな時に、K君がボール奪って相手ゴールに向かって一気に切り込んでいったんですよ。

これ決めたら、まさにヒーローですよ。冷めてた私も、おもわず身を乗り出すドラマティックな展開に、先生もテンション上がり切ってしまったんでしょうね。グランドのK君に向かって「チャンポン行けーーーっ!!」って叫んだんですよ。

全員、えぇっ!?ですよ。お前が言うのかよ、と。あんなに必死に訴えてたのに。もう試合なんかどーでもよくなりましたよ。その後K君がどうなったか覚えてないですからね。

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