TOUCH-ME in 桜座

遠藤ミチロウと中村達也のユニットTOUCH-ME。遠藤ミチロウと言えばスターリンのボーカリストだけど、スターリンはほぼ聴いたことがない。でもこの組み合わせに非常に興味があったんで行ってみました。

遠藤ミチロウ60歳。60のパワーじゃないでしょう、あれは。2人あわせて105歳って言ってたけど、2人ともバケモンですね。凄かった。

2010年9月30日(木)甲府 桜座

今回は、まずハコに驚かされた。商店街の一角にある桜座。「古き良き」という言葉が似合う感じの洒落たカフェの奥にその空間はある。

入口で靴用の袋を渡されて「え?靴脱ぐの?」と思いつつ中に入ってみると、何と客席が畳敷きのひな壇。後ろには2階席があるけど、正面には舞台と呼べるような台はない。地べたに置かれたドラムとマイクスタンドの後ろには、ただのでかい布と呼んだ方が良さそうなスクリーンが垂れ下がっている。

真ん中にはでかい鉄骨の柱が2本。壁面も鉄骨むき出しで、古びた倉庫をそのまま使ってますって感じ。そんな中、きれいな畳と座布団が対照的で、独特な雰囲気を醸し出してる。

ミチロウさんも「素晴らしいとこですね」なんて言ってたけど、この「独自の文化を築いてきた小劇場」といった感じの空間が実にいい雰囲気で、それだけでワクワクしてくる。

もうひとつ良かったのが距離感。物理的な距離も近いけど、それ以上に「距離感」が近かった。ミチロウさんの足踏みとか達也さんのキックの振動が、スピーカーから出た音としてではなくて、地面を直接伝わってきてるような気持ちになる距離感。

地面がそのままステージなのが大きな要因だと思うんだけど、この距離感と会場全体の雰囲気が凄く良かった。そしてもちろん会場だけじゃなくて演奏も素晴らしかった。セッションというより2人のぶつかり合いって感じで、見ていて気持ちのいい緊張感だったな。

冒頭、立て続けに数曲やって一息ついた時に、客席から「達也!おい達也!」とやたら大声で達也さんを呼ぶ男の声。それに対して達也さんはドラムを叩いて応えたんだけど、しつこく呼ぶ声に対し、挙げ句はシンバルに頭突き。

それでも「おい達也!聞こえてんのか達也!」と、もはや恫喝に近いレベルで叫ぶ客に、ミチロウさんが「あんま呼ばんでくれ。調子に乗るから」と返すも、しつこく叫び続ける客。流石にこれはちょっと空気悪いなと思ってると、達也さんが豪快にドラムソロを決めて客を黙らせた。

その客はドラムソロに満足したのか、次のインターバルでは「ミチロウ!おいミチロウ!」と標的を変更。暫く無視していたミチロウさんだけど、いい加減しつこいと思ったか「なんだよ」と応えると、一転して優しく「かっこいいぞ」だって。何そのツンデレ! どうしたいのかさっぱりわからん!

そんな客がいたからかどうか、達也さんは合間合間で静寂を埋めるようにドラム叩いてたな。ミチロウさんの弦が切れてギター交換してる間も、豪快にドラム叩いて場を繋いでた。休憩しなくていいんだろうかと。どういう体してんだろうか。ちなみにミチロウさんの弦は4回くらい切れてた。ピック削れてなくなっちゃうんじゃないかってくらい激しい演奏だったもんなぁ。

中盤でミチロウさんがセットリストらしきものを眺めたあと「凄いゆっくりな曲やる?」と急遽予定を変更すると、達也さんが笑いながら「やってみてください」って。

ミチロウさんが演奏を始めると、達也さんはそれをじっと見つめて、出方を探りながらそこに絡んでくって感じ。圧倒的存在感のあるミチロウさんに達也さんが挑んでるようで、ゆっくりと落ち着いた曲だったのに迫力あって印象的なセッションだったな。

スターリン聴いたことないくらいだから当然初めて聴く曲ばかりだったんだけど、そんな中で特に印象的だったのは、ボブ・ディランの「Knocking On Heavens Door」の日本語カバー。本来の歌詞をそのまま訳したんじゃなくて独自の歌詞をつけたもの。歌詞も凄かったけど、高音のシャウトが時に断末魔の絶叫の様でもあり、寂しく吹き荒む風の音の様でもあり、その世界にただひたすらに圧倒された。

MCでは、ミチロウさんが山梨に来たときによく行く温泉があるって話をしたとき、達也さんに向かって「この人は入れませんけど」って言うと、達也さんは手首まで入れ墨が入った腕をぐいっと見せて「入れるつーの!」と反論。あのアピールっぷりが面白かったなぁ。

えー入れるの?と思ったら、続けて「隠れて入るっつーの!」って。隠れるのかよ! ってか、そんだけ入れてて隠せるのか!?

アンコールでは2人共に上半身裸で登場。その姿にまたしても驚いた。何だこのたくましい体は。60の体じゃないだろ。

最後はパワフルな「仰げば尊し」を歌って終了。とにかく圧倒されっぱなしで、凄いもの見たなぁと思いつつ時計を見てみると、公演時間約2時間。あれを2時間もやってたのかと、終わったあとでも驚かされた。

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